シーナ・・・休日のコント  星の間に消えてゆく・・・切ない日々。

| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK | CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE | OTHERS |
第168話 センチになって 19:03
0



     


    "  I’m Gettin' Sentimental Over You  "



    「センチになって」



     1930年代の曲で、トミー・ドーシーのトロ

     

    ンボーンの切ない色がたまらない。邦題の

     

    「センチになって」も名訳だ。「センチ」

     

    もちろん英語の「センチメンタル」を短縮し

     

    たものだが、間違いなく1970年代の美しい日

     

    本語だったのだ。

     

     だがこの「センチ」は少し特殊で巷の人は

     

    ほとんど使用しなかった。ほぼテレビドラマ

     

    の中だけに存在したと言っても過言ではない。



     この写真はご存じ「大原麗子」

     魅力的な女優だった。愛くるしい表情と少

     

    しハスキーな声に夢中になったものだ。髪の

     

    カッチン留め(ヘアピン)が何ともかわいい。

     

    右に見えるモジャモジャは石立鉄男だ。


     1970年代のテレビドラマがなぜかたまらな

     

    く懐かしい。演じていた役柄がいつか私の中

     

    で大原麗子と一つになった。美しくてかわい

     

    くて頭がよくて家族思いでやさしい。なのに

     

    なぜか自分の心に素直になれない意地っ張り

     

    な女性だった。

     

     相手役とくればもう決まっている。お人好

     

    しでいつも人のために飛び回っていてお金が

     

    なくて、不器用でちょっとだらしないところ

     

    があるが憎めない奴。

     

     二人は互いにひかれ合っているのに衝突ば

     

    かりしてしまう。好きという一言がどうして

     

    も言えないのだ。お約束通りのパターンなの

     

    だが、毎週待っていた。

      テレビの中で大原麗子が言う。

    …私だって、ちょっとおセンチになりたい時

     

    だってあるのよ。

    …今夜のわたしはね。ちょっとロマンチック

     

    なの。

    …そう、わたしね、ある人にお熱なの、それ

     

    が分かったの今夜。
     

     


     私も不器用でちょっとだらしなかったのだ

     

    が、美しくて頭のいい女性と衝突することは

     

    なかった。私が衝突する相手はいつも横柄な

     

    男ばかりだった。現実はテレビのようにはい

     

    かない。

     

     私の青春(これも死後だが)はこんな甘酸

     

    っぱい言葉を一度も聴くことも口にすること

     

    もなく過ぎてゆくことは分かっていた。だか

     

    ら憧れはいつもテレビの中にあった。大原麗

     

    子が教えてくれた。


     「おセンチ」「ロマンチック」「お熱」 

     

    もうどれも遠い。死語になってしまったが、

     

    残しておきたい日本語だ。

     私は忘れない。




     

    | - | comments(2) | - | posted by
    | 1/4 | >>