9月になってようやく涼し
くなり始めると、遠ざかって
行く夏の後ろ姿が寂しく見え
る。人はわがままで勝手なも
のだな。
ある政治家の唯一の仕事が
クールビズで、パフォーマン
スが見事に当たって今では日
本の津々浦々まで広まった感
がある。
だが私はそれがどうも性分
に合わない。暑い夏も半袖シ
ャツは着ないし、仕事でネク
タイを締めずに人に会うこと
はしない。もちろん上着も着
る。
暑いのに大変じゃないかと
よく言われるが、だいじょう
ぶ。人のいないところではか
なり緩んでいますから。
何度か伊勢神宮を正式に参
拝させていただく機会があっ
た。いくつかの注意事項があ
って、上着の着用と革靴が必
要とある。
それは本当にTシャツとサ
ンダルで来てしまう人がいる
からだろう。そんな事を一つ
一つ書き連ねなければならな
いのは残念なことだ。
拝殿の前に立つには相応し
い格好がある。そんな事もわ
きまえない人が参拝をしても
意味はないと思うのだ。
家から出て人に会うにも少
しの身だしなみが必要だ。身
だしなみは自分を良く見せる
ため、もちろんそういう気持
ちもある。が、何より相手に
対する思いやりと敬意なのだ。
着る服と着ける物で、夏は
涼しそうに冬は暖かそうに演
出する。それは素晴らしい文
化であり、それができる人は
輝いて見える。
c
向日葵
ダイヤモンドとピンクサファイヤ
ブローチ(ペンダントヘット兼用)
YD 0.28ct D 1.52ct PS 0.68ct
プラチナ K18イエローゴールド
縦 約39mm 横 約36mm
]]>
大きな男になれ!
.
.
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フランスの田舎町フォンテー
ヌ・ド・ヴォークリューズとリ
ルシュラソルグあたりを旅した
はいつだったか。古い手帳で確
認すると何と15年以上も過ぎて
いた。美しい湧水の水路とアン
ティークで有名な町で日曜日は
露天商も方々から集まって賑う。
そこで美しいカメオを見つけ
た。裸石の状態で、よりきれい
に色濃く見せようとしたのか、
表面に透明のマニキュアのよう
な物が塗られていた。
トルコ石は50年100年という
時間を経て鮮やかな青が少しず
つグリンーンに近づく。研磨さ
れた表面が空気に触れ酸化する
と考えられる。その色が何とも
美しく魅力的なのだ。
そしてもう一つこのカメオの
魅力は彫りがずば抜けて繊細で
表情がやや顎を上げ何かを見つ
めるような趣があり愛らしい。
硬度のある石にこれだけの仕事
をするのは易しい事ではない。
まさに芸術品である。
ストーンカメオだから残った
優品で、ジュエリーに耐久性が
欠かせないことの証でもある。
今年ジュエリーとして蘇らせ
ることにした。カメオをわずか
に左に傾けてセットしてみた。
家族や友人の幸せ、世の中の安
寧、そんな祈りの表情にできた
と思う。
「 祈り 」
アンティークのターコイズカメオと
パライバトルマリンとダイヤモンド
ブローチ(ネックレス兼用)
T 20.33ct
P 0.75ct
D 0.36ct 0.45ct
プラチナ
縦 約55mm 横 約30mm
c
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想像を超える物を
お客様は古いターコイズのイ
ヤリングを帯留めにしたいとお
っしゃった。お持ちの着物にこ
の色を合わせたいと。18金で伏
せ込まれただけのシンプルな物
だった。思い出の品なのだろう。
ターコイズは長い時間をかけ
てブルーの中にグリーンを感じ
る美しい色合いになっていた。
リフォームでは何ができるか
をお客様といっしょに考える。
考えながらご要望に応えられる
かを見極める。お客様はジュエ
リーがどのように、どんな工程
で作られるのかは知らない。出
来ることと出来ないことを明確
に伝えることが大切だ。
それから提案を始める。しっ
かりとイメージしてもらうため
にデザイン画はある。想像を超
える物を作らなければよろこん
では頂けない。
その物は使いやすいか、丈夫
か、オリジナリティーはあるか、
考える事はいくらでもある。難
しいが出来上がった時のよろこ
びは大きい。最も楽しい仕事の
一つだ。お客様といっしょに作
ったのだと思えるからだ。
うれしいことに真剣に考えた
事は必ず私の物作りのノウハウ
となって次に生かされる。
お客様は小柄で可愛らしい人。
何より大切なことはその人に似
合うことだ。私は心して仕事に
取り掛かった。弊社の展示会に
その帯留めを着けてご来場くだ
さった。冥利に尽きる。
ターコイズの帯留め
K18ホワイトゴールド
D 0.22ct
ダイヤを多く使わない。
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売り物ではない
人間はつくづく愚かだ。世界
中に何事もなく平和であった日
など一日もない。必ずどこかで
戦っている。
私はこの人形に「祈り」と名
づけた。
あれは骨董屋さんかな。いろ
んな物があふれるほど置いてあ
るが、良い物は見当たらなかっ
た。そんな中、棚の下の方に素
朴な土の雛人形が並んでいた。
どこか地方の民芸品だという。
その中の一つが他とは明らか
に異質で芸術品に見えて、私の
目をひいた。その人形を取り上
げて訊ねると、少しずつ店主の
笑顔が消えて、それは売り物で
はないという。値段がついてい
るけど。
こういうタイプの店によくあ
る事だ。しょうがないから写真
だけ撮らせてもらった。
ついでにもう一つ、あれは有
名な刀剣店だった。箱の中に錆
び身の刀が何振りも乱雑に置か
れていて、どれも5万円。錆び身
とはいえあまりな扱いを残念に
思った。
私はその中の一振りの脇差を
取り上げて、お金をかけて研い
でみようと思った。傷んではい
るがまだ間に合う。なかなか姿
も良いし、粗末に扱われた物で
はない事が分かる。上級武士の
ご隠居の持ち物に思えたからだ。
私の見立てを聞いて店員さん
はそれを持って奥に引っ込むと
なかなか出てこない。やっと顔
を出すと、しどろもどろで、手
違いでこの箱の中に入ってしま
った物で、売り物ではないとい
う。
二年後に通りかかったので暫
くぶりにその店を覗いてみた。
筑前左文字に見惚れていると棚
の上の段に特別貴重刀剣認定書
付きの脇差がある。あの刀であ
ることが一眼で分かった。
店員さんは当然私の顔など憶
えていない。彼は言った。
…これはさる大名家の隠居の所
持した物でして…。
c
.
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初めてカメラに触れたのは小
学校一年生の時だった。フイル
ムは白黒で12枚撮り。大切に撮
った。高価だったから。
撮り終えると写真屋さんに持
って行く。出来上がるのに一週
間くらいかかったのを憶えてい
る。楽しみで待ち遠しくて切な
いほどだった。
だが出来上がりは真っ黒だっ
たり真っ白だったり惨憺たるも
ので、たまに何かが写ってい
た。カメラの取り扱いも解ら
ない。説明書を見ても殆どの
字が読めない。写真が写る原
理もまったく解らないまま、
それでも触りたかったのだ。
ジュエリーのデザインと制作
は間違いのないように寸法や角
度を図面にして綿密な打ち合わ
せをしながら全ての材料といっ
しょに職人さんに渡す。後は信
頼して待つだけだ。写真の上が
りを待っていた子どもの頃と気
持ちは変わっていない。わくわ
くしながら待っている。
その後写真は飛躍的に確率が
上がって一枚の無駄もなく写せ
るようになったし、ジュエリー
も多少は納得できる物が作れる
ようになった。
そして、今は出来上がりに思
い描いたものを超える感動を求
めている。
写真は、
「小さな村の赤い薔薇」
猛暑つづきで、10日以上空から
一粒の雨も落ちてこなかった。
人影のない小路で真っ赤な薔薇
と向かい合うと、花も苦しいに
違いない。息づかいが伝わっ
た。
…がんばろうな。
思わずつぶやいた時、薔薇が揺
れた。
あの小さな村の名が分からな
い。灼熱のプロヴァンスの幻だ
ったか。
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何とも美しい響きと色なのだが、
あまり良い印象を持たれなくなって
いるのが残念だ。たとえば、国家間
の外交上の折衝など例に取ると良く
解る。今ここで決着をつけなくても、
どちらも面目が立つよう最終的にち
ょっと狡くて賢い折り合いをつける。
それをいつしか玉虫色の決着などと
いうようになった。
どの方向から見るかによって、ま
ったく違った色に見える。世の中は
そういうものなのだ。自分の見方が
全てではない。自分が正しいからと
いって他が間違っているとは限らな
い。人と人の間は実はそういうこと
が多いのだ。社会に係り人の中で生
きて行くということはその連続だ。
主張は大事だが人の言うことも良
く聞く。相手の立場も理解する。意
見がぶつかることは悪いことではな
い。だが人を責めるにしても、いく
かの思いやりがなくてはいけない。
思いやりのないせめぎ合いからは何
の共通点も見出せないのだ。
最近いろんなニュースを見ていて
思う。他人の間違いを責める時、人
は何であんなに強くなるのだろう。
ここ何年か特にそう感じる。
…勘弁してやれよ、人間てのは良い
ことしながら悪いこともするし、と
んでもない悪い奴だって人を助ける
こともある。誰だって脛に一つや二
つ傷があるんじゃねえのかい。
私たちは人を許し人に許され生き
ている。子どもの頃には解らなかっ
た美しい色。それが玉虫色。世の中
は玉虫色で出来ている。
書き出しから脱線してしまいました。
タイトルを「玉虫色」にしたのがい
けなかったな。すみません。
c
・
美しい
玉虫のブローチ
ディマントイトガーネット 0.55ct
スピネル 0.68ct
グリーンガーネット 0.81ct
パライバトルマリン 0.10ct
サファイヤ 0.25ct
ダイヤモンド 0.16ct
縦 約50mm 横 約24mm
プラチナ K18
・
]]>
色彩は人の中にある
マルチカラーとは3色以上が同時
に使われる配色をいう。色が何色あ
ろうと絶妙のバランスを保っていて
美しいことだ。転じて多才な人をマ
ルチ人間などという。
私がマルチな人で思い浮かぶのは
ジャン・コクトー。詩人、小説家、
画家、劇作家、どれも一流で素晴ら
しい作品を残している。
日々のおしゃれに多くの色を取り
入れるのは実はとても難しい。それ
ができる人は優れたバランス感覚と
豊かな色彩感覚、そして表現するこ
とに対する勇気の持ち主なのだ。
色彩を楽しむのは自由の証かも知
れない。歴史を振り返れば単色で統
一されていた時代は不幸だった。じ
っと耐えている色だ。それは世界中
どこの国にも共通する。解放された
瞬間から、服にも絵にも音楽にも料
理にも、室内の壁にまで鮮やかな色
が入り始める。
色彩はもともと人の中にあるのだ。
話が大きくなってしまいましたね。
サファイヤとダイヤモンドのペンダント
S 1.455ct D 0.30ct
プラチナ
NC K18WG 50cm スライド付き
No96116
サファイヤとダイヤモンドの
ペンダント(ブローチ兼用)
S 11.75ct D 0.84ct K18WG
No364715
c
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初めてカメラに触ったのは小学校一
年生の時だった。フイルムは白黒で
12枚撮り。大切に撮った。高価だっ
たから。撮り終わると写真屋さんに
持って行く。出来上がるのに一週間
くらいかかったのを憶えている。
楽しみで待ち遠しくて、切ないほど
だった。だが出来上がりは真っ黒だ
ったり真っ白だったり惨憺たるもの
で、たまに何かが写っていた。カメ
ラの取り扱いも分からない。説明書
を読もうにも殆どの字が読めない。
写真が写る原理もまったく分からな
いまま、それでも触りたかったの
だ。
ジュエリーのデザインと制作は綿密
な打ち合わせをして、間違いのない
ように寸法や角度を図面にして全て
の材料といっしょに職人さんに渡
す。
後は信頼して待つだけだ。写真の上
がりを待っていた子どもの頃と気持
ちはまったく変わっていない。わく
わくしながら待っている。
その後写真は飛躍的に確率が上がっ
て一枚の無駄もなく写せるようにな
ったし、ジュエリーも納得できる物
が作れるようになった。
そして今は、写真もジュエリーも出
来上がりを想像し描いている。思い
描いたものを越える感動を、出来上
がりに求めている。
ファンシーインテンスイエロー ダ
イヤモンドをピンクのメレーで。
きれいなイエローダイヤモンドに出
会った時のために長いこときれいな
アーガイルのピンクのメレーをスト
ックしておいた。良い物を作るには
長い時間と執念が必要だ。
FIY 3.32ct PD 0.965ct
プラチナ
K18ピンクゴールド
c
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展示会の合間に
品揃えを絞り込んで御来場者様も絞
り込んでの展示会。会場は京都 長楽
舘。こういうご時世だから考えられた
企画だった。
「2021 美と輝きの饗宴」
…110年の歴史を刻む洋館で心鳴るひ
とときを。
2021 4・17(土)
京都 大丸
長楽舘は明治42年に煙草王 村井吉
兵衛によって建てられた。
村井は貧しい煙草商の家に生まれ、
販売から収穫、製造にも携わるように
なった。才覚があり、やがて日本一の
煙草商になった。その頃明治政府は煙
草産業の国営化を進めていた。
日露戦争の戦費調達のためだ。専売
にするために権利全てを国が買い取る
ことになる。そうして村井は巨万の富
を得る。
この豪華な洋館の中には非公開の茶
室と和室がある。展示会の合間に頼ん
で観させていただいた。それくらいの
ことはあっても良かろう。それは見事
な物だった。
私は一つだけ質問をした。戦後もず
っとこのまま保たれていたのかと。長
楽舘のスタッフは自社の事をよく勉強
していた。戦後は一時期アメリカ人の
持ち物になり石の外壁にペンキが塗ら
れていたことがあったようだ。
仕事はありがたいのは、仕事がなけ
れば行くことのない所に行くからだ。
それは大きな楽しみだ。この一週間後
に京都も緊急事態宣言が発令された。
仕事の形はこれからもどんどん変わ
るだろう。それに一つ一つ対応してゆ
く。臨機応変は今までもこれからも生
き残るためのキーワードだが、それを
可能にするのは実力以外にない。
c
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時は過ぎてゆく
春は気まぐれだ。小倉に着いた午後
は寒くてひらひらの春のコートでもあ
りがたかった。
去年の桜はここで観たのだった。新
型ウイルスの感染拡大で地方都市でも
イベントを自粛するかどうかの瀬戸際
で、このまま行くか止めるか決断を迫
られていた時だった。みんな様子を見
ていた。
私も準備して来たものの微妙な状況
の中で時間が空いた。それで小倉城の
桜の下をのんびり歩くことができたの
だ。思えば私はしみじみ桜など眺める
ことなど長いことなかった。
この4月、去年より状況が好転したと
は思えないが、時間を短縮したり間隔
を空けることで動き始めている。どん
なに形になろうと仕事は続ける。第4
波の襲来は心配だが細心の注意を払い
進むしかない。そして何らかの結果が
出る。それはよろこびではないか。
一年は驚くほど呆れるほど早い。ど
こで何をしていても時は過ぎて行く。
今年は桜を観なかった。仕事を終えた
帰りはひらひらの春のコートはちょっ
とじゃまだった。春はほんとに気まぐ
れで、人は勝手だ。
2021 春の宝飾グランドフェア
小倉井筒屋 新館9階
パステルホール
北九州の人は意思表示がはっきりして
いて、話していて楽しい。
c
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夏の終りに
葉の色づく季節だから、葉をモチーフ
に制作してみた。
カラーダイヤモンドを材料にした物を
一つ、パライバトルマリン、サファイ
ヤを材料にした物を一つ。
きょうはダイヤモンドの方です。
ペンダントとブローチ兼用で使いやす
い工夫ができたと思う。淡い色彩を引
き立てるのは、いつも無色のグレード
の高いメレーダイヤモンドだ。一つの
ジュエリーにおいてはすべてが主役で
あり脇役でもある。
私は信じている。美しい物は残ると。
作詩者不明の美しい詩がその美しさゆ
えに敬意を払われ、今も歌われている
ように。
カラーダイヤモンド 1.006ct
ダイヤモンド 1.004ct
29mm×22mm
プラチナ
c
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このピンクで何をりましょうか。
0.01%の希少価値、ピンクダイヤモ
ンド...それが1ct upで高品質となれ
ば価値も美しさももはや計り知れな
い。
材料も揃ったし、後は作るだけ。
私は展示会等でルース(裸石)を展示
することはまずない。どんなに美し
くてもルースはジュエリーではない。
デザインと上質な作りが一つになっ
て初めてワンランク上のジュエリー
になる。
ハイジュエリーとは高額品のことで
はなく、一目で判るクオリティーと
気品を備えている。手にとれば温も
りが伝わる。
シーナワークスの物作りです。
c
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流れる時間は止められないから
美しいものに目が止まる。
・
c
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貴重な日本のアンティーク、電傘。
あたたかみのある色合いの明かりが
作り出す空間…静かな会話を楽しむ
ために。
コレクションの中からいくつかを選
んでみました。
.
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